• 魂の健康
    魂の健康

今回は、神秘主義が魂の健康に果たす役割についてお話することにいたしましょう。

これまで何回かにわたってお話してきたように、一般的な健康の概念とは、人間が身体や精神、そして社会面で完全な幸福を確保できることを意味します。これについて、WHO・世界保健機関による健康の定義には次のようにあります。

「健康とは、単に、病気をしなかったリ、体に具合の悪いところが存在しないことではなく、肉体的、精神的、社会的、経済的に問題が存在しないことを意味する」

魂の健康は、これらの要素に加えて、活力、希望、満足感、安心、平穏、そして現世と来世で救われることへの確信が伴っています。

イスラムの教えにおける健康は、完成形であると同時に、ほかの面での成長に至るための要素でもあります。そのため、イスラム教徒には、どこにいても、いつでも、健康を追い求めることが奨励されています。

人間は、身体と精神という2つの側面を持っていることから、人間の健康も物理的な健康と精神的な健康の2つに区分されます。物理的な健康とは、表面上、そして体の健康であり、精神的な健康は人間の心と精神の健康を意味します。すなわち、人間の体が様々な疾病や弊害にさらされると、その精神や心も様々な病気や脅威に直面することになります。

 

 

魂の健康と密接な関係を持っている要素の1つに、神秘主義があります。イスラム神秘主義者の見解では、幸福を実現するための第1の条件として、神への信仰心が挙げられています。神やその預言者たちを信じていない人には、幸福への道はありません。

信仰心に次いで重要なのは、神の預言者とその一門の教えに従うことで、倫理的に卑劣で醜い要素を、心の中から取り除くことです。

また、幸せになるための最も重要な条件の1つは、自分自身についてよく知ることです、神秘主義的な世界観では、自己認識の度合いが高い人は、神のこともよく知ることができるとされています。神を知れば、どのような状態に置かれても、その人の生活は快活で魂の健康に満ちたものになります。

人間は、神に向かって進み、無意味な欲望を捨てれば捨てるほど、より多くの物事を理解できるようになります。つまり、さまざまな真理が分かるようになり、物事をより鋭敏に見極める力や洞察力が身につきます。このような力は、罪や欲望を捨てるまでは持ち得なかったものでした。

 

スピリチュアルヘルス

 

心の底から神を理解し、神に向かう人の行動は、神の満足を得るものとなります。崇高なる神も、その人がどのような状態にあったとしても、さまざまな真理を理解させてくれます。

このような理解力により、人間の信仰心や敬虔さが増し、罪から遠ざかり、片時も神の存在を忘れないようになります。神もまた、その人の前に、精神的な真実を理解するための扉を開き、それによってその人がより多くの真理を理解できるようになります。これは、道路を走る車の運転手のようなもので、前に進めば進むほど、目の前に新しい風景が開けてくることに類似しています。

このため、神の僕は神に向かって進めば進むほど、より多くの真理を見出し、目の前を覆っていた幕が取り払われ、その分だけ神への信仰心が増すことになります。その例としてシーア派6代目イマーム・サーデグの伝承には、次のようにあります。

「あるとき、神の預言者は自らの教友の1人で、ハーレサという名の人物に会ったとき、様子を尋ねると、ハーレサは次のように答えた。『神の預言者よ。私は本当に敬虔な人間です』 すると、預言者は『全てのものにはそれが事実であることを示すしるしがある。あなたの言葉が真実であることを示すしるしは何か』と尋ねられた。そこで、ハーレサは次のように答えた。『そのしるしとは、私が現世にそれほど関心を持っておらず、夜通し礼拝し、厳しい暑さの中で断食をしていることです。私には、創造主が現世での行いを清算する準備をしており、天国の人々が互いに知り合う様子が見え、地獄に落ちた人々が叫んでいるのが聞こえるのです』すると、神の預言者は、次のようにお答えになった。

“あなたは、真理を見たのだから、その道をしっかり歩み続けるがよい”

魂の健康は、神を知ることや神秘主義に根ざしています。本当の神秘主義者は、死後の永遠の命や神を信じることで、安らぎや希望、喜び、満足といった、魂の健康の主要な要素に行き着きます。その人の個人的な人付き合いや社会での活動も神秘主義にそったものとなり、その行動は、他の人々にも影響を与えます。

ここで、10世紀から11世紀にかけて活躍したイランの偉大な神秘主義者で大詩人でもある、シェイフ・アブーサイード・アボルヘイルをめぐる話をご紹介することにいたしましょう。

あるとき、世俗的で表面的な華やかさにこだわる人々が、アブーサイードに対し、ある男が、水の中に沈まずに水面を歩いていると言いました。すると、アブーサイードは次のように答えました。「それは、ごく簡単なことだ。ヒキガエルにもできる」

すると、ある人がまた、次のように言いました。「私は、空を飛べる人を知っている」 そこで、アブーサイードはまたこう答えました。「それもわけのないことだ。ハエや蚊でもやっている」さらに、ほかの人が言いました。「私は、一瞬のうちにある町から別の町へと移動できる人を知っている」 これに対し、アブーサイードは微笑んで言いました。「それは、ほかのことよりもっと簡単だ。悪魔も一瞬のうちに東から西に移動する。それには、何の価値もない」

そのとき、シェイフ・アブーサイードは立ち上がり、全ての人々に聞こえるよう、大きな声で次のように語りました。

「本当の意味でのすばらしい人間とは、仲間の中に座り、そこで立ち上がり、仲間とともに語らい、飲食をともにし、市場で仲間と取引をする者のことである。また、人々と交わりながらも、一瞬たりとも神を忘れない人である」  

次回もどうぞ、お楽しみに。

2018年02月27日17時46分
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