タブリーズは歴史、自然、芸術が結集し、多くのイラン国民の英雄を輩出した町といえます。この町は、悠久の歴史と大自然の摩訶不思議を誇ることから、多くの観光客がその魅力に惹かれてこの町を訪れています。今回は、タブリーズの自然の美をご紹介してまいりましょう。

東アーザルバーイジャーン州には、山や湖、森林、緑豊かな平原や谷、ミネラル分を含んだ水の湧き出る泉、洞窟、滝といった自然界の魅力に加えて、文化・歴史面での魅力が存在します。このため、この州は自然散策を広める上での高い可能性を秘めています。この地域の自然に関心をお持ちで、タブリーズを訪れようと思っているのでしたら、選択肢はたくさんあり、タブリーズでは年間を通して数多くの名所や自然の美を堪能できます。

東アーザルバーイジャーン州の景勝地の1つにアラスバーラーン地区があります。ここは、山岳地帯でもあり、毎年多くの観光客が訪れます。この地区へのアクセスには様々な方法がありますが、その主な方法の1つとして、まずは空路でタブリーズに向かい、そこからさらに、タブリーズからアーハルに向かう街道を利用する事が挙げられます。

 

 

 

アラスバーラーン樹林は、総面積が7万ヘクタール以上に上り、地理的にはカスピ海南岸のヒルカニアン混成林の一部とされ、カスピ海や黒海沿岸部の樹林に極めて類似しています。もっとも、イラン北部や黒海沿岸部の樹林には、ブナやカバノキ科ハンノキ属の広葉樹アルダーが多いのに対し、アラスバーラーン樹林にはカシやアカシデが多く自生しています。

アラスバーラーン樹林は、イランとアゼルバイジャン共和国の国境を流れるアラス川の南岸に広がっており、先だってユネスコはこの地区を生物圏保存地域(ユネスコエコパーク)に認定しました。この生物圏は、地中海性気候の影響を受けている事に加えて、カスピ海およびコーカサス地域の気候区分にも属しています。そして、海抜高度が高いことから、さらに異なる気候が存在しています。

アラスバーラーン樹林は、比較的多様な動植物が生息しており、植物の点ではカスピ海岸地域の湿潤気候、コーカサス地域の気候、そして地中海性気候という3つの気候が合流する地域にあります。この地域の南の部分は牧草に覆われ、北部と標高220メートルから800メートルの丘陵地帯には樹林が見られるとともに、牧草地帯も広がっています。

 

アラスバーラーン

 

 

アラスバーラーン地域に存在する山々は互いに連なり密集しています。このため、これらの山の一部は、この地域で話されるトルコ語で、密集した山々を意味するガラ・ダーグと呼ばれています。ガラとは、トルコ語で数が多い事や密集している様子を意味しており、ガラダーグという言葉全体で、数多くの山が連なっている様子を表しています。

アラスバーラーンは現在、国立公園に認定されており、ここには多種多様な動物が生息しています。しかし、ここで注目すべき事は、人工的な開発が及んでいない原生林が存在し、破壊されやすいものであることから、この地域が1971年に立ち入り禁止区域とされ、その後に自然保護監視区域に指定されたことです。ちなみに、この地域には220種類の鳥類、38種類の爬虫類、5種類の両生類、48種類の哺乳動物、そして22種類の魚が生息しています。アラスバーラーン樹林に生息する哺乳動物はカモシカ、ヤギ、イノシシ、クマ、ヤマネコ、ヒョウなどです。

また、この地域に生息する水鳥や陸上に生息する鳥類には、ニシアジアクロライチョウ、シャコ、キジなどがいます。アラスバーラーン国立公園の主な義務の1つは、カモシカの1種の保護と繁殖であり、最近この種の7頭のカモシカが、イラン北東部にある国立ゴレスターン公園からこの地域に移されています。

アラスバーラーン地域には、こうした動物に加えて多種多様な植物も生息しています。この地域に生息する植物には、カシ、フランスモミジ、スーマック、メギ属の落葉低木バーベリー、ザクロ、リンゴ、セイヨウナシ、ラズベリー、ヤマグミなどがあります。また、アラスバーラーン樹林に見られる在来種の果物には、酸味のあるクランベリーがあり、毎年1本のこの果樹につき3キロから4キロの果実がとれます。

さらに、アラスバーラーン樹林には、様々な樹木のほかにも多様な植物やキノコが生息しており、アーザルバーイジャーン地方で発見された2400種類の植物のうち、およそ1400種類がアラスバーラーン樹林のものだとされています。また、この樹林の周辺の地元民は、主に牧畜や造園業、養蜂、手工芸、観光業に従事しています。

 

アラスバーラーン

 

 

タブリーズのもう1つの見所は、この町の周辺にある山岳地帯や海抜高度の高い丘陵地帯であり、そのためこれらの地域には多くの登山客が訪れます。タブリーズから南に50キロ離れたところには、サハンドという山があります。サハンド山は、アルボルズ山脈の一部をなしており、東アーザルバーイジャーン州の西部にある、マラーゲという町の北西から北東に向かって伸びています。また、その最高峰は海抜3710メートルです。

サハンド山系は、イランの山岳地帯の花嫁として知られています。この山々の緑豊かな裾野や、この地域に湧き出る泉は、人々の心を和ませてくれます。この山系の最高峰はジャームという名称で呼ばれており、サハンドとジャームという2つの峰が互いに癒着した形になっています。また、サハンド山系の峰には泉があり、地元民の間ではこの泉は聖なる存在とされています。

サハンド山は、神話学における伝承において非常に高く位置づけられています。一部の研究者の間では、サハンド山はゾロアスター教の聖典アヴェスターに出てくる聖なる山とされ、ゾロアスター教徒はここで自らの崇める神と語らっていたといわれています。

サハンド山の大部分は、1年を通して雪に覆われており、一方で裾野は色とりどりの花が咲き乱れています。このため、サハンド山はほかでは見られない景勝地とされ、常に東西アーザルバーイジャーン州の各地の人々をはじめ、タブリーズの内外からやってくる人々にとって、緑にあふれた絶好の行楽地となっています。また、この山の裾野には、非常に珍しい植物である逆さチューリップをはじめとした、野生のチューリップやアネモネが咲き乱れ、興味深い風景を生み出しています。

 

アラスバーラーン

 

 サハンド山の裾野やその周辺に広がる平野には、およそ185の在来種の鳥類や渡り鳥、哺乳動物のほか、多種多様な希少植物や生物が生息しており、これらの野生生物の重要な生息場所となっています。これらの希少生物はいずれも、ここを訪れた人々にとって興味深く、また思い出に残るものです。

サハンド山は、観光名所である事に加えて、この地域の農牧業や養蜂の発展にも大きく寄与しており、東西両アーザルバーイジャーン州の多くが豊かな緑に恵まれているのは、この山の存在に負うところが大きいといえます。この山の峰や裾野には、数多くの泉が存在することから、その周辺地域はさわやかな気候に恵まれているとともに、樹木や庭園、牧草地は常に潤っています。

サハンド山には、地元の牧畜業者や部族にとって非常に適した牧草地が存在します。東西両アーザルバーイジャーン州の部族や地元の牧畜業の関係者は、毎年夏をこの地域で過ごし、家畜に草を食べさせるためにサハンド山の裾野に移動します。またこの山の裾野は、大量の花が咲き乱れることから、蜂蜜の生産に最適な場所とされ、この地域で生産された蜂蜜は特に名声を博しています。

サハンド山では、冬が長く、従って寒さが厳しく大量の雪が降ることから、樹木や植物が生長しにくくなっています。しかし、この山の牧草地には1年草のほか、多年生植物や宿根草などの様々な植物がふんだんに見られます。毎年、サハンド山にはイラン全国から多数の登山愛好家がやってきますが、彼らは特に春から夏の初めにかけて、アーザルバージャーン地域を訪れています。

 

 

サハンド山

 

 タブリーズ近郊では、もう1つの大自然の驚異を間近に見ることができます。それは、山々が色鮮やかに光るという現象で、この現象が見られるのは世界のほかの地域では、中国北西部・甘粛省の七彩山(しちさいさん)のみに限られています。この七色に光る山は、1500万年の歴史を持つアーラーダーグラール山と呼ばれ、東アーザルバーイジャーン州南東部の町ミヤーネから、さらに南東にあるザンジャーン州の間を走る街道沿いにあり、イランの大自然の七不思議の1つとされています。

 このアーラーダーグラール山が七色に染まる風景は、年間を通していつでも見られます。もっとも、それぞれの折に、その折独自の光景が見られますが、それはこの山が太陽光線の反射の加減によって独自の色彩を放つからです。秋と冬には、雨や雪が降ることからほかの季節とはまた違った光景を見せてくれます。

 

イランの七彩山・アーラーダーグラール山

 

 

次回もこの続きをお届けします。どうぞ、お楽しみに。

 

 

 

2018年07月11日18時56分
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