• 狩人
    狩人

昔々、一人の狩人がおりました。

昔々、一人の狩人がおりました。

この日、狩人は弓矢をかついでもう長いこと茂みを歩いていました。狩人は立ち止まると、弓矢を地面において額から流れる汗をぬぐいました。あたりを見回しましたが、獲物は見当たらず、空には一羽の鳥もいません。狩人は思わず不平をもらしました。

「今日はついていない。動物たちは、一体どこへ行ったのだ?」

狩人は仕方なく、引き上げることにしました。その時です。突然、草むらの向こうから軽やかな足音が聞こえました。

 

狩人はそっと弓矢を取り上げると、身を潜めました。そして耳を澄ませました。少し経つと、背の高い草の向こう側から、美しい一頭のカモシカが飛び出してきました。カモシカは狩人の存在に気付いておらず、優雅に気取った様子で歩いていました。狩人の口元に笑みが浮かびました。

「何てすばらしい獲物だ!ぜったいに逃がすものか」

狩人はゆっくりと弓に矢をつがえました。そして、狙いを定めて力いっぱい矢を放ちました。

 

矢はカモシカの心臓に命中しました。哀れなカモシカは、声一つ上げずに地面に倒れました。狩人はカモシカのところに駆け寄ると、体から矢を抜き取りました。そして、獲物をかつぎ上げると先ほどとは打って変わって、鼻歌を歌いながら家に向かいました。家までは少し距離がありましたが、立派な獲物を手に入れることができた今、少しも疲れは感じませんでした。その時です。どこからともなくガサガサという音が聞こえました。狩人は立ち止まってあたりを見回しました。

「もしかしたら、またカモシカだろうか?」

 

狩人は最初、もう今日は獲物をとる必要はないだろうと考えました。しかしすぐに考えを改めました。

「こちらの一頭は売って、その金で必要なものを買おう」

狩人は獲物を静かに地面におくと、弓矢を用意しました。再び、物音が聞こえました。狩人は矢をカモシカめがけて放つ用意をしました。ところが彼の眼に飛び込んできたのは、大きなイノシシで、それが彼に向かって突進して来る姿でした。狩人は慌ててイノシシに矢を向かって放ちました。矢は見事にイノシシの首に刺さりました。ところがイノシシは倒れるどころか、血を流しながら突進してきます。おまけにさっきよりも猛々しく唸り声まで上げているではありませんか。狩人は素早くもう一本の矢をつがえました。

 

ところが時すでに遅く、イノシシは彼にのしかかってきました。狩人はイノシシと格闘しました。しばらくの間、人間と獣の格闘が続きました。そして、どれぐらい時間が経ったでしょうか。たくさんの血を流した狩人とイノシシは、カモシカの死体のかたわらで共に息絶えてしまいました。その時、弓矢は狩人の手の中にあり、いつでも放てるような状態に保たれていました。それは非常に悲しい光景でした。血を流して物言わぬなきがらが3つ並んでいるのです。そのときでした。腹をすかせたオオカミが近くを通りかかったのは。オオカミは血の匂いを嗅ぎつけると、その匂いのする方へと駆けつけました。

                       

オオカミにはにわかに信じられませんでした。3つの上等なえさがまるでオオカミの登場を待っていたかのように地面に並べられているのです。オオカミは喜びに心を躍らせました。何の苦労もせず、これほどの食べ物が手に入ったのですから笑いが止まりません。

「腹をすかせた不幸なオオカミよ、お前が報われる日がついに来たのだ。好きなだけ食べるがよい」

 

そのときオオカミに、ある考えが浮かびました。

「そうだ、今日頂戴するのは一つだけにしよう。そしてあとの二つは隠しておくとしよう。そうすれば、ここしばらくは獲物を探さなくて済む。さて、それではまず、今日の昼の分をいただくとするか」

 

オオカミは、まず狩人から味わうことに決めました。ところが、獲物にかぶりつこうとしたオオカミの鼻面が、狩人の手にあった弓矢にぶつかりました。あっと言う間に矢が弓から放たれ、オオカミに命中したのです。オオカミは一体何が起こったのか理解する間もありませんでした。よろよろと何歩か歩いたかと思うと、そのまま地面に倒れ込んで死んでしまいました。気の毒に、オオカミの3つのえさを腹いっぱいに食べるという望みは、こうして儚く消えてしまったのでした。

 

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2018年09月17日20時18分
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