7月 13, 2022 17:51 Asia/Tokyo

イランの広大な大地は、多くの自然や観光名所を有し、エコツーリズムの可能性という点で、世界のトップ5に名を連ねています。このシリーズでは、イランの自然の恵みをご紹介して参りましょう。

イランの文化において、花は、特別な地位を有しています。それは、イランの人々の口承文学やペルシャ詩人たちの詩の中に見て取ることができます。イランの逸話やことわざにも、花に触れているものが数多くあります。例えば、「花を語る」という表現は、美しい言葉を語る、という意味を表します。また、おめでたい席、祝祭などでは、花が用いられます。イランの伝統的な儀式では、ちょうど今の季節、つまり4月の下旬から6月の下旬にかけては、花の象徴とされ、イランの住民たちは、神聖な宗教施設の埃を払い落とすために、バラ水を利用します。

 

●カーシャーンのバラ水

 

イラン中部・カーシャーンのバラの花摘みと、バラ水の蒸留は、イランの人々によく知られるもので、毎年この時期になると、この伝統的な作業を一目見ようと、イラン各地から、多くの旅行者がカーシャーンにやって来ます。近年は、外国人観光客も、この季節になると、バラ園や、伝統的なバラ水蒸留の作業を見学にやってきて、故郷の人々に、その良い香りを土産に持って行きます。それでは、カーシャーンのガムサルのバラ水蒸留作業について見ていくことにいたしましょう。これは毎年、バラ摘みの終了とともに、カーシャーンの古くからの伝統に基づいて行なわれるものです。

 

毎年春になると、イラン中部の中央砂漠から少し離れた、カーシャーンのガムサルにあるバラ園は、ケルケス山のふもとの心地よい気候の中で、花を咲かせます。バラのつぼみが完全に開くと、カーシャーンの近郊にあるニアーサルやガムサルのバラ園では、花摘み作業が始まります。現在、ガムサルの700ヘクタールを超える土地が、バラの栽培に使われており、平均して、1ヘクタールごとに、3トンのバラの花が収穫されています。

 

春に入って2ヶ月目から3ヶ月目、つまり、5月の初めから6月の終わりにかけては、大人も子供も、毎朝、日の出を待たずに、バラ園に向かいます。そして、独特の手法で、器用にバラの花を枝から摘み取っていき、首に吊るした袋の中に入れていきます。花を日の出前に摘み取るのは、太陽の熱や光で、花の香りが逃げてしまわないようにするためです。

 

花摘みの際、花をガクの部分から摘みます。それは、花びらの部分ではなく、この部分に香油成分が含まれているためです。この仕事に携わる人々は、花の香りは、ほとんどこの部分から発せられていると考えています。バラ水の蒸留作業が始まる季節になると、甘い香りを放つ数千トンものバラの花が、数千個の伝統的な釜や一部の工場で、カーシャーン独特のバラ水の香りに変わります。

 

この季節、ガムサルのほとんどの家では、伝統的な方法によるバラ水の蒸留作業が行なわれます。この時期、家という家の扉は、訪問客の前に開かれており、バラ水を作る人々は、蒸留作業の傍らで、訪問客の質問に答えていきます。作業の道具は、非常にシンプルなものが選ばれます。たらいのような入れ物に花を入れ、火にかけます。そのとき生まれる水蒸気が、管を通して、冷たい水の中にある器へと導かれていき、こうして、バラ水が取れるのです。もちろん、機械で行なう場所では、より迅速にこの作業が行なわれるため、大量生産が可能となっています。いずれにせよ、こうして取れたバラ水は、専用のガラスのビンやプラスチックの容器に入れられ、荷造りをして出荷されます。

10トンのバラの花につき、1キログラムのエッセンスが取れ、花1キロにつき、2リットルから3リットルのバラ水が生産されます。バラ水は、純粋にバラの花から取れるもので、その液体に不純物は一切混じっておらず、完全に透明で、苦味があります。カーシャーンのガムサル地区では、毎年数千トンのバラ水が生産されています。ガムサルは、バラの花とバラ水の生産地として世界的に知られており、毎年、イスラム教徒の最大の宗教儀式であるハッジ・メッカ巡礼の季節になると、メッカにある神の家は、このガムサルのバラ水で清められています。

 

イランのバラ水は、国内の需要のみならず、ペルシャ湾岸のアラブ諸国、ヨーロッパ、東南アジアの国々にも輸出されており、特に、世界でも香水の生産地として知られるフランスも、ガムサルのバラ水の購入国に名を連ねています。

 

興味深いのは、カーシャーンのガムサルに昔からある慣習により、子供が生まれると、バラの花を敷き詰めた上に寝かせます。これは、バラの花に慣れさせ、大きくなって、花にアレルギーを持たないようにするためです。また、赤いバラは、最も優美な花として、伝統医学の基礎となる植物です。というのも、多くの伝統的な薬品は、最終段階で、バラ水や香油成分が加えられているからです。

 


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