2019年11月16日14時28分
  • ネザーミー・ギャンジャヴィー
    ネザーミー・ギャンジャヴィー

今回も前回に引き続き、イランの12世紀の著名な詩人、ネザーミー・ギャンジャヴィーを取り上げ、この詩人の特徴と作風についてお話することにいたしましょう。

前回お話したように、ネザーミー・ギャンジャヴィーは12世紀のイランの名高い詩人です。彼は、1135年から1145年ごろ、当時はイラン領の一部で、現在はアゼルバイジャン共和国の領内にあるギャンジェの町で生まれ、1209年ごろにこの地で没しました。さらに、この詩人が当時の一般的な学問に対する知識を有しており、また非常に裕福であったことから働いて収入を得たり、また職業として詩作をする必要がなかったことについてもお話しました。そこで、彼は他人との交わりを避け、勉学と研究にいそしみ、神学や伝承学、コーランの解釈を学び、哲学や神秘主義を習得したのです。

ネザーミーは、12世紀の文学の潮流の先駆者とみなすことができます。彼がペルシャ語の詩の構造や、そこで使われる言葉に変革をもたらしたことは、全ての研究者や思想家にとって疑いのないものです。また、彼は刷新というものや新しいものを生み出すことを求める、限られた詩人の1人でもあります。

ネザーミーは新たな表現、また語彙の使用や組み合わせにおいて特別な才能を有しています。ネザーミーを最も後世に名の残るイランの大文豪に押し上げたものは、比ゆ的表現における新しい創意工夫、そして叙事文学と叙情文学を融合させたことです。ネザーミーの詩においては、その語調の精神的、思想的なデリケートさが、全ての読者をひきつけてやみません。これにより、ネザーミーの語る言葉は一般人が理解できる範囲に留まっており、その後現在まで数百年にわたって、専門家のみならず、一般の人々の驚きと賞賛を呼んでいます。

 

ネザーミーは、当時のどの学者よりも、医学や哲学、音楽、天文学に精通しており、そうした学問の全てを自らの詩作に活かしていました。このことから、彼の詩作は11世紀と12世紀のイラン文化の全容を示すものとなっています。さらに、その詩の中で数多くの諺を例えとして引用しており、さらに数十に上る国民的、宗教的な物語に間接的に触れています。

修辞学的な点から見て、ネザーミーの詩において何よりも重要で注目すべきであり、彼の詩を豊かにしているものは、美しい語彙を選び、また語彙をうまく組み合わせるという、この詩人の特別な才能です。ネザーニーの詩において使われている語彙は目的を持っており、またそれらの語彙は言語構造上どれほど修飾の力があるかによって選ばれています。人々の間にネザーミーの言葉が広まった理由は、その言葉が平易で滑らかであることにあり、この特徴は彼の散文作品の全てにおいて見られます。ネザーミーの詩に読まれている内容はコーランにそった概念です。彼は、折りあるごとに、神の啓示の内容を詩で美しく描いています。ネザーミーの知性を現代にまで伝えているのは、詩人としての彼の力強い言葉、流麗さ、比ゆ能力、言葉を作り出す力、そして適切な表現力です。

ネザーミーの詩も、表現と意味内容の双方の点で、詩歌の頂点を極めています。ネザーミーは常に、最も美しい言葉を選ぶよう努めており、美しい語彙や表現、強い空想力、そして民間信仰や学識に対する彼の見識が、この詩人の詩を豊かなものにしています。彼は、詩歌や詩人であることにおいて、それまでにはなかった表現や新たな意味内容の創造を、特に重視していました。このため、自分の身の周りの世界をより深く掘り下げて注意深く観察しています。ネザーミーの作品全体を見てみると、彼が新たな意味概念のために大変努力し、成功も収めていたことが分かります。彼は、過去に使い古された繰り返しの表現をやめて、誰もまだ手をつけていない新たな意味概念を、自らの作品の中に導入しているのです。

ネザーミーが詩の中で情景を描く際に活用した方法や手段は、彼以前の詩人たちが採用していたものです。しかし、ネザーミーはそれらの方法に別の色合いを加えています。原則的に、詩文においては各種の描写や直喩、隠喩、説明表現を使用することができ、この方法によって現実的な内容を空想的に語ることができます。ネザーミーは、こうした詩の技巧を駆使して、自らの吟じる内容に新鮮さや面白さを加えており、こうした描写は斬新で華やか、そしてきらびやかなものに感じられます。現代イランの優れた文学研究者のザッリンクーブ博士は、ネザーミーのこうした詩的、芸術的な特徴について次のように述べています。

「ネザーミーの語る内容の構造における語調や合成語は、きらびやかな宝石のようであり、それらが韻を踏む形で連なっている」

 

ネザーミーの描写表現は、非常に自然的で具体的であり、しかも流麗です。彼は、多くの場合において様々な内容を正確に、特に細やかな注意を払って描写しています。ネザーミーの作品の研究者によれば、春や秋といった季節、夜などの自然現象に関するネザーミーの表現は、他に類を見ない、非常に美しいものです。人物や自然の様相を描写するネザーミーの能力は、非常に優れており、現代イランの優れた文学研究家ユーセフィー教授によれば、ネザーミーは最も醜い光景ですらも美しい情景に描いている、とされています。

情景を描写するネザーミーの力は多くの場合、驚くべきものです。例えば、彼は五部作のうちの『七王妃物語』に出てくる、『ドラゴンとバフラームの宝』の物語において、1人のメディア人の様子を非常に美しく表現しており、その瞬間に読者は臨場感あふれる躍動的な世界へと引き込まれます。人々や物語の登場人物の精神的な状態の描写においても、ネザーミーのこうした類まれな力が見て取れます。

 

ネザーミーの言語的、芸術的なもう1つの特徴として、魂のない物体や創造世界の現象を擬人化する、というものが挙げられ、彼が描く詩的な情景をより力強く正確なものにしています。彼は、こうした方法をとることにより、多くの場合において精神や生命のない事物を、言葉や意識、理解力にあふれたものとして提示し、作品全体において読者を躍動感あふれる生きた世界の物語へと引き込んでいます。

ネザーミーは、自らの豊かな想像力により、詩という形で魂のない事物に命を吹き込むことに成功しており、ある詩において秋風の美しさを表現しています。この詩では、秋風が略奪を行う1人の追いはぎとして表現され、チューリップが攻撃される人間役として描かれています。『七王妃物語』では、風と雲が召使として話の場面に登場し、庭園と芝生に水をやって手入れし、そのほかの物語の登場人物と同様に自らの役を演じています。

こうした特長は、ネザーミーの描写の表現の一部、特に夜空と星星がテーマとなっている部分において、全ての世界をまさに今生きていて躍動し、考えている存在として表現しています。現在イランの文学研究者ザッリンクーブ教授は、『目的地のない探索におけるギャンジェの詩人』という著作において、ネザーミーの思想や詩歌を検討し、このイランの詩人の言語的、詩的な芸術について次のように述べています。

「長編の作品におけるネザーミーの描写表現は、多くの場合色鮮やかである。物語の人物の内面、例えば、孤独や苦悩、恐れと別離、憧れといった表現における、この詩人の能力は他に例がなく、彼の著作である『ホスローとシーリーン』、『ライラーとマジヌーン』などの恋愛物語では、絶妙な表現により何度も読者を陶酔させている」

 

次回も、この続きをお届けする予定です。どうぞ、お楽しみに。

 

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