ペルシャ語ことわざ散歩(118)「ザンジバルのザンギー人か、あるいはローマのローマ人か」
皆様こんにちは。このシリーズでは、イランで実際に使われているペルシャ語の生きたことわざや慣用句、言い回しなどを毎回1つずつご紹介してまいります。
今回ご紹介するのは、「ザンジバルのザンギー人か、あるいはローマのローマ人か」です。
ペルシャ語での読み方は、Yaa Zangii-ye Zang, yaa Ruumi-ye Ruumとなります。
このことわざに出てくるザンジバルとは、アフリカ東海岸のインド洋上に浮かぶザンジバル諸島を指しており、現在はタンザニア連合共和国に属しています。
また、ここに出てくるザンジバルのザンギー人とはアフリカの黒人、それに対しローマのローマ人とは肌の白い白人を指しています。
このことから、このことわざは黒人なら徹底して黒人であれ、白人なら徹頭徹尾白人であれ、即ち両方であってはならない、自分の持ち場や立ち位置をきちんと守り、自らの責務を完遂すべきであるということ、自らのすべきことや役割を怠慢や抜かりなく徹底して果たすべきことを意味しています。
ところで、このことわざにはザンジバルとローマという、一見何の関係もなさそうな2つの地域が出てきますが、これは現在のタンザニアをはじめとするアフリカ東海岸地域の歴史的背景が関係していると言われています。
この地域では、古くからインド洋を舞台にアラビアや ペルシャ、インドとの交易が、行われていました。特にこの地域で生産される象牙や金などが中国やヨーロッパで珍重されるようになったことから、この地域の商人たちもこぞって西アジア・イスラム圏や中国、西ヨーロッパに商いのために乗り出していった、ということです。
また、現在タンザニアの最大都市ダルエスサラームから南へ300kmの洋上にはキルワ・キシワニという島があります。伝説によりますと、西暦750年に現在のイラン南部の町シーラーズ出身のハッサンという王が、兄弟7人でアフリカ東海岸へ7隻の船を連ねてやってきたとされています。
実際、現在のタンザニアの一部を形するザンジバル諸島には、こうした歴史的背景から人種的にアラブ、イラン、インドなどにルーツを持つ住民が多いそうです。今回ご紹介したことわざは、遠い昔にインド洋を通じてイランと東アフリカ地域の交易が行われていたことを裏付けるものと言ってもよいかもしれませんね。それではまた。