6月 24, 2022 04:29 Asia/Tokyo

イランの広大な大地は、多くの自然や観光名所を有し、エコツーリズムの可能性という点で、世界のトップ5に名を連ねています。このシリーズでは、イランの自然の恵みをご紹介して参りましょう。

イランの自然をご紹介するこの番組、今回は、アルボルズ山脈の最高峰、ダマーヴァンドの雪山をご紹介致しましょう。アルボルズ山脈、そしてこのダマーヴァンド山は、イランの人々に深く愛され、古代の伝説や物語にも登場します。フェルドゥースィーなど、イランの英雄叙事詩人らは、ダマーヴァンド山について、多くの詩を歌ってきました。また、古代文学だけでなく、現代ペルシャ文学においても、イランの人々の抵抗、忍耐のシンボルとして、偉大な詩人たちにインスピレーションを与えています。イランを訪れた旅行家の多くも、その旅行記の中で、このダマーヴァンド山に触れています。このように、ダマーヴァンド山は、見る者すべてを魅了する壮大さと威厳に満ちているのです。

 

サイクス氏は、著書「イランの歴史」の中で、ダマーヴァンド山について、次のように記しています。

「ダマーヴァンドの壮大な火山は、カスピ海の南側、ヒマラヤ山脈の西側に位置し、その標高は、5671メートル、アジア大陸の最高峰のひとつと言われている。明らかに、ダマーヴァンドの詩的な幻想は、見る者の心に強烈な印象を与える。特に、私のように、冬の最中、この山の向こう側に日が沈んでいく様子を見た者にとっては、なおさらである。太陽がアルボルズ山脈の彼方に消えてゆき、辺りが次第にうす暗くなってくると、美しい円錐形をしたダマーヴァンド全体が赤く染まってゆく。この赤みは、次第に上へ昇ってゆき、最終的に、頂上だけが染められる。そのとき、完全に日が沈み、辺りに暗闇が訪れるのだ。私はこれほど美しい光景を見たことがない。これは、イランを離れるたびに、私の脳裏に懐かしく浮かぶ光景である」

 

外交官で医師でもあった、あるドイツ人は、およそ150年ほど前、ヨーロッパ諸国、エジプト、トルコ、コーカサスを回った後、イランを訪れています。彼は、『ガージャール王の宮殿への旅』と題する著書の中で、旅仲間一行と共に果たした、ダマーヴァンド登頂の詳細を記し、その際の驚きについて、次のように述べています。

「イランの山岳地帯は、ドイツの、ひいてはヨーロッパ全体のそれよりも遙かに美しかったことを認めなければならないだろう」

 

この他にも、ダマーヴァンドの登頂に海外から訪れた登山家はたくさんいますが、彼らは皆、イランの人々の登山への関心について触れ、地質学的、気候的なイランの高山の特徴に注目した後、次のように語っています。

「ダマーヴァンドは、西から東に延びるイランの山脈のちょうど真ん中にある最高点とされている。また、ヒマラヤ山脈へと続く辺りにあることから、外国人の登山家にとって、非常に幻想的なものである」

 

ダマーヴァンド山は、標高5671メートル、壮麗なイランの最高峰で、世界でも類を見ないほど、よく整った円錐形をしています。この他にも、世界には、標高3776メートルの日本の富士山、あるいは標高5156メートルのアルメニアにあるアララト山など、きれいな円錐形の山々はありますが、どちらも、ダマーヴァンドの標高には及びません。また、ダマーヴァンドは、およそ10万年前から休火山となっており、火口には硫黄の成分が見られます。ダマーヴァンド山の噴火の形跡は、4000メートル以上の地点にある硫黄岩や純粋な硫黄の破片、また、漏斗(じょうご)の形をした頂上にある、30メートルの深さの大きなくぼみなどに見られます。このくぼみは、常に雪や氷で満たされています。ダマーヴァンド山の頂上の気温は、夏の昼間でも、マイナス4℃と成っています。

 

●ダマーヴァンド山の登頂

 

ダマーヴァンドの登頂を果たすには、様々なルートがありますが、最も適したルートは、ハラーズ街道のプルール村を経由するものです。ダマーヴァンドには26の分水嶺があり、そのうち、東西南北に走る4つのルートが、往来の多い主要ルートとされています。

 

3500メートル以上の地点にある泉は、硫黄を含んでいるため、登山家たちは、飲料水を確保するために、低い地点の氷河や雪を利用しています。太陽の光を直接浴びることのない、山の北部や北東部、そして4000メートル以上の地点には、数多くの自然氷河が存在しています。特に、「雪の屋根」と呼ばれるダマーヴァンド北東部の登山は、非常に難関であり、このルートから登頂を果たせるのは、経験を積んだ登山家だけだと言われています。反対に、南側のルートは、太陽の光を浴びるため、雪や氷も少なく、登山にふさわしい気候となっています。登山家らは、4100メートル地点にある最後の拠点となる小屋を、夜中に出発し、太陽が硫黄の丘を完全に照らす前に、頂上に到達するよう調整しなければなりません。なぜなら、頂上にある硫黄の丘が太陽に照らされると、そこから硫黄ガスが噴出するからです。

 

●ダマーヴァンドの自然

 

ダマーヴァンドの2000メートルから3500メートルの地点は、辺り一面、ひなげしの花で覆われています。ひなげしは、春から夏の初めにかけて咲き誇り、この山に壮麗な美しさを与えています。また、麓の一帯には、多種多様な植物が生えており、周辺をよいかおりで包み込んでいます。こうした植物としては、はあざみ、レンゲ草、オレガノ、バラモンジン、マヨラナ、スミレなどが挙げられます。

 

ダマーヴァンド山は、北をイラン北部の森林地帯、南を比較的乾燥した地域と接しているため、多くの珍しい野生動物が生息しています。この地域で見られる野生動物としては、きつね、ジャッカル、狼、犬、クマ、かもしか、ヤギ、いのしし、ウサギ、ネズミ、コウモリ、また鳥類としては、わし、はやぶさ、ふくろう、シャコ、鳩、カラス、カササギ、キツツキが挙げられます。さらに、蛇やサソリも生息しています。ダマーヴァンドの麓には、「キャブータルリー」、「アスク」、「ゴルザルド」という名の3つの洞窟があります。

 

ダマーヴァンド山には、多くの鉱泉や温泉がありますが、中でもよく知られているのが、ダマーヴァンドの温泉と鉱水、アーブアリーの鉱水、アスクの泉、ラーリージャーンの温泉、そして山麓北部の鉱水です。この地域の鉱水や温泉には、カルシウム、マグネシウム、鉄分、塩分、炭酸ナトリウム、カリ、塩素、ナトリウムなどの成分が含まれているため、腎臓や呼吸器官の病気、リューマチや神経痛の他、皮膚病の治療に非常に効果的です。

 

ダマーヴァンドの自然の魅力のひとつは、「氷河の滝」です。この滝は、山の南側、硫黄の丘の手前の標高5000メートルから5100メートルのところにあり、この氷が溶けて水になることはありません。滝の長さはおよそ7メートル、幅はおよそ3メートルです。夏になると、毎日、日光が当たるため、気温が氷点下以上になる昼近くには、雪や氷の混じった僅かな水が溶け出しますが、夕方、気温が氷点下以下に下がると、再び氷になります。このためこの滝は、常に凍っているように見えるのです。また、滝の上部には、一年を通して雪に覆われたくぼみがあります。

 


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